今年は8月末まで!夏限定・磯部簗(いそべやな)でちょっと贅沢な時間を過ごしませんか?

群馬県安中市、磯部温泉街には「碓氷川」という清流が流れています。こちらは利根川水系の一級河川で、季節が暖かくなってくると魚釣りを楽しむ方の姿も伺えます。魚がいるということは水がきれいな証拠!

 

そしてなんといっても!磯部の夏といえば「磯部簗(いそべやな)」。

碓氷川に臨む素晴らしいロケーションの中、とれたての鮎料理を堪能することができます。

 

例年は6月中旬〜9月下旬の営業ですが、今年2020年はコロナウイルスの感染拡大防止のため、7月11日〜8月31日と営業期間が短くなっています。

うかうかしている間に終わっちゃう!ということで、今回はオープン直後に磯部簗へ直行、たっぷり楽しんできました。今回はそちらのレポートからお伝えします!

 

こんな調理法まで!?極上の鮎料理の数々

まずは磯部簗の目玉、鮎の塩焼き。店前でライブで焼かれる鮎を、焼きたての状態でいただくことができます。

 

白身魚ながらふっくらジューシーで、たんぱくさよりも旨味が勝る極上の鮎。ほおばった口の中には一気に夏が広がります。これと一緒にビールを飲もうものなら……もう何も言うことがないですね……!!

 

そして!取材班がぜひおすすめしたいのが、こちらの鮎のお刺身

みなさん、川魚のお刺身なんて食べたことありますか……?そもそも生で食べられるものなの……?

実際に食べてみると、歯ごたえはコリコリとしていて少し筋肉質。でもこちらも旨味が強く、海の白身魚とはまた違った味です。魚特有の生臭さなどは全く感じないので、どんどん食べ進めてしまいます。

 

他にも、鮎を使った料理がたくさんありました。フライ、田楽、さらには天丼まで……!鮎自体がほんとうに美味しいので、どんな調理法でもベストマッチ。ぜひお好きなものを食べてみてください。どれも最高です。

 

さて、ここからは、さらにこの磯部簗を楽しむため、お店を支えている方お2人にお話を伺っていきます。

まずは鮎の塩焼きを作っている現場、いわゆる「焼き場」のスタッフとして働く小森谷さんに、鮎の焼き方などを聞いてみました。

こだわりの焼き方で、じっくり30分。

小森谷さんにお話を伺うために焼き場に入ると、中央の囲炉裏から強い熱風が。気候も相まってかなり暑い……!!

─うわっ!ここはすごく暑いですね!

小森谷さん

そうでしょ。ピーク時はすごい本数を焼くから、顔が日焼けみたいに火傷しちゃうんだよね。

─たしかに、ここまで火に近い仕事をしていると大変そうです。1日にどれくらい焼くのでしょうか…?

小森谷さん

土日だと100本以上は焼くかな

─さすがの磯部簗ですね……。

小森谷さん

ちなみに今は最大で30本くらい焼ける炭焼器を置いているけど、ピークの時はこっちの大きいほうを使うんだよ。こっちは一度に50本は焼けるね!

─おお〜〜!でかい!しかしこれだけ大きいと、焼き場がもっと暑くなりませんか。

小森谷さん

いや〜そりゃね。炭の量も増えるから。こんな時期だからフェイスシールドを使ってくれと渡されたんだけど、溶けちゃって使えないんだよ。まあお客さんと直接顔を合わせるわけではないから、そもそも必要ない現場なんだけどさ。

─ちなみに、鮎1匹あたりどれくらいの時間をかけて焼くものなのでしょうか?

小森谷さん

だいたい30分くらいかな。とはいっても挿しっぱなしにすればよいわけではなくて、全体がまんべんなく焼けるように適宜向きを変えているんだよ。

布巾を鮎に見立てて説明してくれる小森谷さん
小森谷さん

まずは内臓のあるお腹側からじっくり火を通して、次に背中側を焼く。火の通りが偏らないように角度も変えながらね。

─30分!想像以上に長いです。しかも、タイマーをかけて放置しておけばいいというわけではないんですね……!

小森谷さん

そう。必ず焼きたてを提供するから、目を離すわけにはいかないんだよ。

 

あと、蕎麦とのセットで出すときは、茹でたての蕎麦と焼きたての鮎が同時に出せるように厨房と連携してる。焼き上がる3分前くらいになったら厨房に「お蕎麦お願い!」と声をかけて茹でてもらうんだよね。

─めちゃくちゃありがたいですね!それ嬉しいなあ。その他に、美味しい焼鮎を出すためのこだわりはありますか。

小森谷さん

串だね。これは焼き場の代表である片岡さんの手作りなんだよ。

─串を手作り……?

小森谷さん

左が片岡さんの作った串、右がネットで買った大量生産の串。手作りのほうはカドが取れていて先が細いでしょ。こうすることで鮎の身が崩れずに済むんだよ

─うおお本当だ……!しかしこれはどうやって作っているんでしょう?

小森谷さん

そこの竹林から竹を取ってきて、片岡さんが一本一本削り出してる。職人だよね。

─まさにこだわりですね……すごすぎる……!

そこの竹林

 

それでは、続いて磯部簗の店長である多胡さんにもお話を伺っていきましょう!

なるべく地元の食材を。磯部を見守り続けて56年

─磯部簗は、いつごろから営業している施設なのでしょうか?

多胡さん

昭和39年の創業なので、56年目くらいになりますかね。最初は安中市の観光課が管轄でしたが、次に安中市観光機構、そして現在では「並木苑」という懐石料理店を経営している会社が運営しています。

─歴史が長いですね!多胡さんご自身は、こちらで働き始めてどれくらいになりますか。

多胡さん

もう25年になります。店長になってからはまだ短いんですけどね。管轄の母体が変わる前からずっと働いているんですよ。

─25年……!その前はどんなお仕事をされていたのですか?

多胡さん

なんにもしてなかったです(笑)。子育てが大変で。でも子供が2人どっちも大学に入ったから、助けになればと思って働き始めたんです。それがここまで長く働くことになるとは、自分でも思っていませんでしたね。

─それだけ、仕事が多胡さんに合っていたということですよ!

─磯部簗には、1日にどれくらいのお客さんが来るのでしょうか。

多胡さん

多いときでは、夜だけで70人くらいの方に来ていただけますね。

─品数も多くて豪華だから忙しそうですね…!しかも、鮎以外の料理も手が込んでいるし。

多胡さん

たとえば卓上の醤油や、キュウリに合わせているお味噌は安中市の有田屋さんのものを使っています。なるべく地元のものをお客さんに出したいと思いましてね。

─変な質問なのですが……25年間ここでお仕事をしてきた多胡さんからすると、やはり職場に愛着は湧きますか。

多胡さん

愛着と言うかはわからないですけど、たくさんの人間関係に出会えるのが楽しいなとは思いますね。ここで働いていると、いろんなお客さんに出会えるので。

─長く働いているからこそ、お客さんも安心して来店できますね。逆に大変だったことは……?

多胡さん

うーん……排水溝に足をひっかけて骨折したことくらいですかね。

─え!大丈夫だったんですか!?

多胡さん

まあ、その年のシーズンが終わるタイミングだったので、丁度よかったんですけどね(笑)

─(丁度よかった…?)そういえば、磯部簗は夏限定の営業なんですよね。冬はどうなっているんでしょう?

多胡さん

そもそも夏仕様の涼しい建築になっているので、冬は寒くて居られないですよ(笑)。昔は川側に窓もなかったくらいですから。

─いろいろ状況が変わるなか、磯部簗が変わらず愛されているのは、多胡さんのお人柄があったからかもしれません。

多胡さん

そうなんですかね?(笑)。そうだったら私も嬉しいですね。

 

磯部の夏を、美味しい料理ときれいな空間で支えるたくさんの方々。今回はその中からお2人にインタビューを行いました。

今年は夏祭りも中止となり、磯部の夏が少しさみしい気がしてしまいますが、磯部簗は元気に営業中です。

8月31日までと短い期間になりますが、ぜひ一度この場所を楽しんでみてください!

 

文=市根井直規
写真=市根井直規・大河原伸
モデル=さや

この記事を書いた人

市根井

群馬県出身・在住。小さな地域編集プロダクション、合同会社ユザメ代表。
地域の持続と豊かな暮らしのために走り回っています。